愛のない部屋
これから自分がどうしたいのか、どうすべきなのか。結論は容易に出た。
ちゃんと先生の話を聞いて向き合って、そして――もう会えないと伝えよう。
篠崎の言うサヨナラをしない道を選んでも、どんな関係であればいいのかが分からない。
年の差、教師と生徒。
元から友達ではなかったのだから、"恋人から友達へ"そんな道は選べない。
「後悔しないようにね」
タバコの火を消し、持っていた灰皿へと吸い殻を処理した篠崎は立ち去った。
まだ持ったままでいた名刺のシワを伸ばし、そして眺める。
〇〇大学教授
深見 隆一郎
その肩書きには、アメリカの有名な大学の教授だということが記されていた。
高校教師から大学の先生に、なったらしい。
ふかみ、りゅういちろう
彼の名前を指でなぞる。
深見先生、
あなたは私のことを覚えていてくれたんだね。
嫌われたと思ってたから、本当は少しだけ、安心したんだ。