愛のない部屋
帰り道、峰岸はいつにも増して無口になり、私の方を見向きもしない。
駅までの道のりを、気まずいままに進む。
いや、峰岸は話しかけてくれる。
いつも通り、何気ない言葉を。
それを上手く受け止められずに言葉のキャッチボールを止めているのは私の方だ。
「……」
「……」
きっと峰岸は私が肝心なことを話せていないと悟っている。
「あのね」
だから話さないといけないと思った。
「うん」
「いきなり訪ねて来られて、私もビックリしたんだけどね。昼間の方は、高校時代の担任の先生なの」
「へぇ」
こっちが重い口を開こうとしているのに、なんでそんな気のない返事なのよ……。
「担任の先生でもあって……私が好きだった人」
過去形を強調したつもりだが、初恋とは言えなかった。
「ふぅん」
「……」
なに、その態度。
「やっぱいつものスーパーで良くねぇか?」
「いいわ」
もう先生と会ってしまったのだから、敢えて遠いスーパーに行く理由はなくなっていた。