愛のない部屋

先生に会いたい、素直にそう感じた。

過去から持ち出してきてしまった"憎しみ"を、"懐かしさ"に変えられるのは、イマしかない。



「……でも、」



峰岸の言葉はまだ続いていた。



「何度も言うけれど、本心は行って欲しくない」


「……」



ストレートな言葉はとても珍しい。




「峰岸はどうして、"頑張って来い"って言ってくれないの?私だって本当は行きたくないのに、それでも勇気を出して行くのに……どうして背中を押してくれないの?」


「……」


「マリコさんと会うと知った時、私は峰岸を信じて……いってらっしゃいって言ったのに。峰岸は私のこと、信じてくれないの?」



信じてる、そう言ってくれると思った。

けれど峰岸の口から出た言葉は正反対だった。



「かつての恋人と再会して、恋に落ちない可能性がゼロとは言えないだろうが」


「酷い……!」


単なる峰岸の嫉妬だと気付いていたはずなのに、私の口は動いた。


< 407 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop