愛のない部屋
「それじゃぁ峰岸はマリコさんと、もう一度愛し合いたくて。それで会いに行ったの?」
峰岸の目が大きく見開いた。
「私でなくマリコさんを選ぶつもりで、再会したの?」
「……おまえ、そんな風に思うのか?」
「だって峰岸がそう言ったじゃない!」
「いい加減にしろよ!!」
声を荒げた峰岸は勢いあまって机の上のビールを溢した。
床に落ちたグラスが割れる音が響く。
「おまえが俺を信じていないで、どうして俺がおまえを……信じられる?」
グラスが落ちたことで冷静さを取り戻した峰岸は、語りかけるように言う。
「恋愛は、一方通行じゃ成立しないんだぞ」
「……」
知ってる。
分かってるよ。
私、峰岸を信じてた。
マリコさんの元から帰って来てくれると信じていたよ。
峰岸は私のことを信じてくれないの?
「私は――」
「もういい。聞きたくない」
「なんでよ!」
「おまえの好きにしろ」
落ちた破片を拾う峰岸は投げやりな態度をとった。