愛のない部屋
一刻も早く話を終わらせたくて、適当な喫茶店に入る。
あの頃はあんなにも先生と一緒に居られる時間を恋しがっていたのに、人は変わるものだね。
「前置きは省いても良いよね」
「はい」
注文した珈琲が届いてもいないのに、先生はすぐに口を開いた。
「僕が君の元を離れた、本当の理由は……」
そっと息を吸った先生は、告げた。
「病気のせいなんだ。もう治らないと医者から言われてね。僕の余命は残り僅かだった」
「病気……?」
「君には高校を卒業した後も、素敵な輝かしい未来が待っている。道を閉ざされた俺と、一緒になってはいけないと思った」
「……冗談ですよね?」
「俺は海外に行って大掛かりな施術を何回も受け……やっと、快復の見込みができたんだ。冗談だと思うのなら、俺の身体を見せるよ。まだ施術の傷痕があるからね」
「……」
「病気を治して一番最初に思ったことは、君と会いたいということだ。抱きしめて、謝りたかった。それからーーやり直したいと思ってる」
衝撃を受け、頭痛がする。
病気……?
その真っ直ぐな瞳は真実を語っていた。
先生の病気に気付けなかった自分が不甲斐ない。
「今でも君を思っている」
優しい言葉が、届いた。