世界で一番似ている赤色
「はい、じゃあ玉ねぎもよろしく」
「うわ、包丁滑る。いてっ……」
彼は包丁を置き、左手を上に挙げた。
どうやら左の人差し指を切ってしまったらしい。
「あーあ。やっぱ切ったか。ばんそうこうある?」
「いいよ。これくらい舐めといたら治るっしょ」
「だめ、ちゃんと消毒しなきゃ。いったんストップ」
火を止めて、消毒液とばんそうこうを準備する。
人差し指の先っぽが薄く切れていて、血がにじみ出していた。
台所の床に2人で座り、彼の傷を消毒液でぬぐった。
「もしお互いどっちか事故にあっても、俺らって輸血しやすいんじゃない?」
なおもわき出してくる赤色を見つめながら、彼は冗談ぽくそう言った。
「や、近親者の血って自分のと似すぎてるから、そのまま使ったら逆に危ないって聞いたことあるよ。よくわかんないけど。はい、できた」
ばんそうこうをくるっと巻き、優しく指を撫でた。
彼はその指を眺め、「血が似てる、ねぇ」とつぶやいた。