世界で一番似ている赤色


「はい、じゃあ玉ねぎもよろしく」


「うわ、包丁滑る。いてっ……」



彼は包丁を置き、左手を上に挙げた。


どうやら左の人差し指を切ってしまったらしい。



「あーあ。やっぱ切ったか。ばんそうこうある?」


「いいよ。これくらい舐めといたら治るっしょ」


「だめ、ちゃんと消毒しなきゃ。いったんストップ」



火を止めて、消毒液とばんそうこうを準備する。


人差し指の先っぽが薄く切れていて、血がにじみ出していた。



台所の床に2人で座り、彼の傷を消毒液でぬぐった。



「もしお互いどっちか事故にあっても、俺らって輸血しやすいんじゃない?」



なおもわき出してくる赤色を見つめながら、彼は冗談ぽくそう言った。



「や、近親者の血って自分のと似すぎてるから、そのまま使ったら逆に危ないって聞いたことあるよ。よくわかんないけど。はい、できた」



ばんそうこうをくるっと巻き、優しく指を撫でた。


彼はその指を眺め、「血が似てる、ねぇ」とつぶやいた。


< 185 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop