世界で一番似ている赤色
プチプラのショップに行き、スカートを物色する。
優にぃは先に買い物を終えたらしい。紙袋を片手にわたしに近づいてきた。
「ねー優にぃ。これとこれ、どっちがいいかな~」
大人っぽい花柄ロングと、カジュアルなデニムスカート。
値段は同じくらい。おこずかいで買える範囲。
鏡の前を占領し、2つのスカートを交互に腰にあて雰囲気を確かめる。
優にぃは待ちくたびれたのか、「どっちでもいいんじゃない?」と言ったため、「真剣に悩んでるの!」と言い返しておいた。
今日のわたしの服装はシフォンのスカート。
スカートを当てて離してを繰り返すたびに、裾がふわりと揺れた。
ひざがあらわになった。
「綾。そこ、どうしたの? あざになってる」
優にぃははっとした表情で、鏡越しにわたしのひざを指さす。
「あ。これ? 体育でちょっとやっちゃって」
「誰かにやられた?」
「誰って言うか、その、バスケのボールが飛んできて。あ、優にぃも覚えてる? 大和くんに……」
「まさか、あいつにぶつけられたの?」
「違くて、なんか偶然っぽい」
この前、学校が楽しくないと言っちゃったせいか、優にぃは真剣な声で問い詰めてくる。
今は、どっちのスカートにするかの方に真剣になってほしいのに。
「とにかく! わざとじゃなくてたまたまボールがぶつかっただけ。で。びっくりしてわたしが勝手にすっ転んだってこと。お互い中学生だし、大和くんも昔みたいにいじめてくることはないよ。これは本当!」
彼の目を見てそう伝えると、「ならいいけど」と引き下がってくれた。