Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
携帯はまたチロリロリンと通知音を告げたけれど、マナーにして鞄の中にしまった。

「それから」

「……はい」

まだなにか、叱られるんだろうか。
せっかく楽しい旅行のはずだったのに、行きがけからこれだなんて最悪だ。

「唇、噛まない。
こういうことするとき、困るでしょ」

赤信号で車が止まった。
春熙の顔が近づいてきて、ちゅっと唇を触れさせて離れる。

「機嫌、直った?」

「……うん」

……嘘。
全然、嬉しくなかった。
春熙の意図がみえみえで。
こんなに簡単なことで機嫌が取れるって思われている、お手軽な自分が嫌だった。
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