Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
リムの右端を持って、くいっと高鷹部長が眼鏡を上げる。

「……酷いです」

確かに最初の頃はしょっちゅう椎名さんに注意されていたけれど、いまはたまにしかないんだけどな。
ちょっとだけむくれたら、高鷹部長がおかしそうにくすりと笑った。

「橋川が誘いに来たと思うが、昼、一緒にどうだ?」

「……わかってるのに意地悪です」

橋川くんにはすでに、断ってあるのだ。
それをこんなふうに確認してくるなんて。

「悪かった。
うちは打ち合わせを兼ねての食事が多いから、香芝専務か東藤本部長が一緒じゃないと愛乃が決まった店にしか行けないというのは、不便だよな」

「……すみません」

毎回、わざわざ打ち合わせで決まった内容を私だけに教えてもらうのは心苦しかった。
父にも春熙にも、仕事の一環だし、高鷹部長が責任を持つって言ってくれているからと説得しているが、なかなか首を縦に振ってもらえない。
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