朝マヅメの語らい
仕事以外の用事すら進んで引き受け、嫌な顔ひとつせず、愚痴もこぼさない。橋爪が他人の悪態をつこうとも「そうですか?」と受け流し、話に乗ってくることもなければ、こちらを否定しようともしない。

常に上司を立てることも忘れず、相手の仕事の邪魔にならない程度にうまく頼ってくる。橋爪にとって、坂巻は出来すぎた部下だった。迷惑なほどに。

 改革という体の再編成で、情報システム部が総務部に吸収される形になったのが、三年前。その一年後、総務部長の引き抜きで坂巻が現れた。

 現在進行中の新基幹システムの開発プロジェクト。これこそが総務部長の考えた改革の基盤で、坂巻はどうしても必要な人材だったのだろう。

業務システム開発で高名なベンチャー企業から優秀な指導要員が送り込まれ、いよいよ改革が始まると、これまでのスタンダードはあっけなく消え去った。
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