王子様は甘いのがお好き
「ああ、タイムアップみたいだね」

社長はやれやれと言うように息を吐くと、受話器を手に取った。

「はい…はい、わかりました」

話を終えた社長は受話器を置いた。

「田中さんですか?」

そう聞いた私に、
「うん、田中さんだよ。

早く佃さんを返してくれって」

社長は答えた。

返してくれって、誘拐された訳じゃないんだから…。

「じゃあ、戻ります」

そう言ってドアの方へと向かった私に、
「仕事、頑張ってね」

社長は微笑んで手を振ってくれた。

それに対して、私の心臓がドキッ…と鳴った。

「は、はい…」

私は返事をすると、社長室を後にした。

バタンとドアを閉めると、
「な、何なんだ…」
と、私は呟いた。
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