4時44分45秒目の世界には
振り返る少女の眼前で、蛇口のバルブが、勝手に回っていく。

壊れたラジオがけたたましく笑い出すように、蛇口から水が怒濤の勢いで流れ始めた。

「やだ……!!」

少女の限界が、嫌悪を叫ばせた。

洗面台に背を向け、駆け出す。

寸前、

「っ!?」

その首を、なにかに握り締められた。

まったくの真後ろ。たった今まで、だれもなにもなかった、そこ。

「ぁ、う……や……!」

涙をこらえながら振り向いた少女は、そして目が合った。

鏡の中から、上半身だけずるりと這い出している、少年と。

血走った目と。

少年の、臭くぬめった手が、少女の首を絞めていた。

少女は必死に手を解こうと抵抗する。

少年の肌はまるで、サンショウウオのような粘液に覆われていた。

気持ちが悪い。

ハァ、ア。

臭い息が、少女の首筋をなまくあたためた。

「やだ!!」

叫んで、少女は全体重をかけながら前進した。

背後で鈍い手応えがあり、少年の腕が、肘からちぎれる。

少女はそれを床へかなぐり捨て、廊下へ飛び出し。

階段を駆け昇った。
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