4時44分45秒目の世界には
真っ暗い廊下の向こう。

闇が霧のようにたむろしている先から、ぴちゃん、ぴちゃんという水音は聞こえる。

洗面台の、あるほうだった。

少女は壁に手を添えたまま、ゆっくりと進んでいく。

そして廊下の右手、ぽっかりと開いた入り口を曲がってすぐのところ、電気のスイッチを入れた。

明るくなる視界。

白い洗面台。

その上の鏡――に、

自分と、

さっきの少年が映っていた。

それも、自分の肩に寄りかかるようにして。

「!」

とっさに跳ね退いた少女だが、そこには、なにも、いない。

ぴちゃん。

と、また、水音。

少女は、いっそ毅然とした態度で洗面台へ向かい、バルブを閉めた。

もう、今すぐに自分の部屋に戻り、ベッドの中で目を閉じてしまおう。

目が覚めたら、きっといつも通り、母が目玉焼きを作っていてくれてる。

そう信じ、きびすを返した少女――の背後で――

ぴちゃん。

「!」

ぴちゃん。

「……」

また、

ぴちゃん――

「ぅ、そ……」

ぴちゃん――

水滴の、

「なんで……」

ぴちゃん――

したたる音が。

< 12 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop