4時44分45秒目の世界には
二階の自室からキッチンへと降りた少女は、グラスに水を注いだ。

一気、飲み込んで、少女は息をつく。

ただでさえ覚めていた目が、ひやりとした喉越しでさらに鮮明となる。

流しにグラスを置き、部屋に戻ろうとした。

その時――

トン、

と――音が聞こえた。

トン、トン――と、それは、階段を踏む音……。

トン。

おかしい。

少女は棒立ちになった。

トン。

二階には、だれもいないはずである。

父も母も、下の部屋で寝ている。

トン。

二階の部屋は自分ひとり。

それなのに、いったいなにが、いったいだれが、二階から降りてきているのか。

トン。

いったい、なにが……。

キッチンの明かりが、廊下の向こうへ白く四角く伸びている。

が、その足音は――

光に照らされる寸前で、止まった。

まるで、姿を現すことだけは、拒んでいるように。

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