4時44分45秒目の世界には
父でも、母でもない。

黒い影。

泥棒……?

少女は、そんな予想をした。

しかし。

窓に映った黒い影はどちらでもない。

曇りガラスに、なにかが張り付いた。

小さな、少女のそれとそう大差ない、手だった。

指をいっぱいに開いた掌が、曇りガラスに密着する。

ガラスを撫で回すそれが、音を立てた。

ぎゅ、ぎゅきゅ、きゅう。

もちろん、そんな手の持ち主を、少女は知らない。

思わず叫んだ。

「だれ!」

ドンッッ!!

「!!」

返ってきたのは、声ではなく、轟音だった。

トイレのドアが、すさまじい音に、揺れる。

金具が一瞬、が、ちゃ、と悲鳴をあげた。

ドンッッ!!

が、ちゃん。

ドンッッ!!

が、ちゃん。

「だっ、だれ!?」

もう一度訊ねた。

すると――

急に、ロウソクの火が尽きたように、静かになった。

静かになった。

静かになった。
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