4時44分45秒目の世界には
便座に座った少女は、ふと横を見た。
壁紙の中で、玉乗りをしているピエロが、真っ赤な唇で笑っている。
少女は、このかわいいのか不気味なのか微妙な壁紙が、あまり好きではなかった。
トン。
と、
「?」
トン。
また――
トン。
小さな音。
しかしそれは先ほどよりも近く、先ほどよりも明確に。
トイレのドアを、叩いていた。
トン。
トン。
ノックされる。
「……だあれ?」
返事はない。
トントン。
ただ――
トントントン。
「お母さん?」
トントントントン。
「お父さん?」
トントントントントン。
ノックが、繰り返される。
父でも、母でもない。
なら、いったい、だれが……。
トン。トン。
「……だ、」
トン。ト――
「だあれ?」
……
…………
………………
四度訊ねた途端、静かになった。
なにも、なにも、聞こえない。
それなのに、
ドアの小窓に、
黒い影が、
下から映り込んだ。
壁紙の中で、玉乗りをしているピエロが、真っ赤な唇で笑っている。
少女は、このかわいいのか不気味なのか微妙な壁紙が、あまり好きではなかった。
トン。
と、
「?」
トン。
また――
トン。
小さな音。
しかしそれは先ほどよりも近く、先ほどよりも明確に。
トイレのドアを、叩いていた。
トン。
トン。
ノックされる。
「……だあれ?」
返事はない。
トントン。
ただ――
トントントン。
「お母さん?」
トントントントン。
「お父さん?」
トントントントントン。
ノックが、繰り返される。
父でも、母でもない。
なら、いったい、だれが……。
トン。トン。
「……だ、」
トン。ト――
「だあれ?」
……
…………
………………
四度訊ねた途端、静かになった。
なにも、なにも、聞こえない。
それなのに、
ドアの小窓に、
黒い影が、
下から映り込んだ。