『One more Love♡』
「あれ?お父さん,心は?」

先に中に入ってリビングのソファーで腰を掛けていた,お姉ちゃんが後から来たお父さんに聞く。

「ん?後ろから付いて来てるだろ?」

お父さんは,後ろを振り返るとシーンっとしていた。

「あ,あれ?心っ??」

お父さんが,玄関の方へと向かおうとした時だった。

「あのっ…俺が行きます…。一応…俺達2人の問題な事には変わりないので…。」
「奏くん…分かった…君に任せる…」
「奏くん…」

不安そうな声で名前を呼んで来たお姉ちゃんに,奏が微笑み返すと,玄関の方に向かった。

「心?早く中に入って…って…心?」

奏は,キョロキョロと見渡すが,その場にあたしの姿が見当たらず,少し探そうとした時,無惨にも地面に壊れ落ちたスマホに気付いた。
「これは…心の…な…んで……」

奏は,壊れたあたしのスマホを無言で拾い,部屋の中へと戻った。
リビングに着くと,奏が戻って来た事に気付いた,お姉ちゃんが尋ねた。

「奏くん?どうかしたの?ってか…心は?」
「……居なかった…その変わり…これが…」

リビングに居た,お父さんとお母さん,お姉ちゃんに,壊れたスマホを見せた…。

「これは…壊れたスマホ?これがどうかしたのか?」
「このスマホ…心のなんです…。」
「えっ?心のスマホってこんなんだったかしら?!」

奏がお母さんの言葉に頷く。

「どうして…心のスマホが…このスマホ,一体どこに…」
「玄関出てすぐくらいのトコロです…。心のスマホがここにあるってなると…もう連絡が着かない様な気がする…」
「そっ,それは…大丈夫なんじゃない?だって…これからの事もまだ,何も話してないんだし…。」

奏の言葉に,少し動揺をかくせないお姉ちゃんが,そう言ったのと同時くらいに,〝あっ!!〟っとお父さんが叫んだ。

「なっ何…いきなり叫んだりして…ビックリするじゃありませんか。」
「ぁ…すまん…ただ…おれがここに来る前に…その…心の頬を引っぱたいてしまったんだ…」
「なっ?!何で,引っぱたいたりなんか…?!」
「………何でだろう…な…。」

お父さんは,視線を落とすと無言になった…。
恐らく,あたしが最後に叫んだ言葉は,聞こえてなかったのだろう…。



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