【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
そう頭ではわかっているけれどわたしは何も言えずに固まったままだ。
もうずいぶん前の話になるのにどうしてあの頃の話になると、いつもの自分を保っていられなくなってしまうのだろう。
「赤城さんを振るなんて、いったいどんな奴なんだー! 俺だったら、絶対にそんなことしません!」
隣で前野くんが告白めいたことを口走っているのに、わたしは一向にときめくこともなく、昔の傷をえぐられた痛みに必死で耐えていた。
妙に喉が渇いたので、手元にあったグラスを一気に煽った。結構きついお酒だったのか、喉が熱い。
「カップル成立かぁー?」
なんて大騒ぎしている。バカバカ悪しい。
この場が面白ければそれでいい――そんな雰囲気についていけない。
参加した自分の頭をぽかぽかと殴りたい気分だ。
「前野―! 赤城さんを落とすのは大変だぞ。元彼ってあの皆川駿也(みながわしゅんや)だからな」
事情を知っている人物が、触れられたくない過去を暴いていく。
「え、あの皆川代議士の息子の?
たしか今、総理の娘との縁談話が持ち上がっているって聞いたけど。そういえば元うちの社員でしたっけ?」
前野くんはわたしに話を振ってきたけれど、何も言わずに目の前のグラスを持ち上げて一口飲んだ。
黙りこくったわたしを放っておいて、話題を提供した社員が嬉々として話し始める。
もうずいぶん前の話になるのにどうしてあの頃の話になると、いつもの自分を保っていられなくなってしまうのだろう。
「赤城さんを振るなんて、いったいどんな奴なんだー! 俺だったら、絶対にそんなことしません!」
隣で前野くんが告白めいたことを口走っているのに、わたしは一向にときめくこともなく、昔の傷をえぐられた痛みに必死で耐えていた。
妙に喉が渇いたので、手元にあったグラスを一気に煽った。結構きついお酒だったのか、喉が熱い。
「カップル成立かぁー?」
なんて大騒ぎしている。バカバカ悪しい。
この場が面白ければそれでいい――そんな雰囲気についていけない。
参加した自分の頭をぽかぽかと殴りたい気分だ。
「前野―! 赤城さんを落とすのは大変だぞ。元彼ってあの皆川駿也(みながわしゅんや)だからな」
事情を知っている人物が、触れられたくない過去を暴いていく。
「え、あの皆川代議士の息子の?
たしか今、総理の娘との縁談話が持ち上がっているって聞いたけど。そういえば元うちの社員でしたっけ?」
前野くんはわたしに話を振ってきたけれど、何も言わずに目の前のグラスを持ち上げて一口飲んだ。
黙りこくったわたしを放っておいて、話題を提供した社員が嬉々として話し始める。