レフティ

「っし、もう決めたから」

「いや、嬉しいんだけど…大丈夫?絶縁とかやめてよ?」

私の言葉には肯定も否定もせず、ただにこっと微笑むだけだった。

いずれ私と離れると考えていた彼が、私を手放さないと言ったこと。
もうそれだけで、私は満足なのに。

「で、俺の話はもう終わりでいいんだけど」

幸せ気分にどっぷり浸かっていたところ、彼は思い出したかのように、私がどこにいたのかを問いただしてきた。
まだ覚えてたのか。

「あのー…やけになったっていうか…」

「は!?まじで言ってんの?」

ぽろっとこぼれてしまいそうなほど、彼は大きく目を見開いた。

「や、待って聞いて」

「いや無理だわ」

どうやら、彼のスイッチを入れてしまったらしい。
何度も何度もその舌が首筋をいったりきたりすると、私も言葉を発するのがやっとだ。

「ホテルには行ったけど!」

「もういいから黙って~」

すねた顔が、胸をくすぐる。
なんかもうちょっと、このままでもいいかも、なんて。
― 思ったのが間違いだった。

そのあと行為が進めば進むほど、私は息をつく間もなく攻め立てられ、くったくたにされてしまった。

“ホテルには行ったけど、なにもしてない”
そう伝えられたのは、翌朝のこと。

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