満月は密やかに

私はあれからもこの家から逃げられずにいる。
今逃げてもそれは無意味なものになると実感したからだ。
一度きりの逃亡劇は、たった二日の内に幕を閉じた。
この出来事で、私は一生消えない傷跡を刻まれることなり
それは時折『忘れるな』そう言っているかのように疼き痛む。

「おかえり満月…。明日から学校なんだから早く寝なよ?残りの高校生活もあと少しか…楽しんで。」

彼は余裕の笑みを浮かべていた。
彼を変えてしまったのは紛れもなく私。
それが無性に胸を締め付ける。

代替わりしてから統一し始めた彼の軍団は、鰻登りにその名を轟かせている。
あの忌まわしい親父の願望を叶えてしまった私は、ただ歯を食いしばっていた。
あいつはもうこの家の中には居ないのに、それを上回る彼を残して、若い彼女と暮らしていると下っ端の奴が話していた。

「痛っ・・・」

唇が切れていたのを忘れていた、歯を食いしばるのはどうやら癖になってしまっていたようで、上から雨のように降るシャワーで洗い流した。

「満月、顔色悪いけど平気?」

慶子の声が頭上から響くと、ふと我に返りまわ



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