夢原夫婦のヒミツ
少しドキドキしながら尋ねた。

「あの、大和さん」

「ん？　どうかした？」

食べる手を止めて私を見る彼に、思い切って言ってみた。

「来月、蘭の誕生日で……。それで今度、誕生日プレゼントを買いに佐介とふたりで出掛けようと思っていまして」

チラッと大和さんの様子を窺う。だけど表情は変わらない。私の話を聞き、微笑んだ。

「そうか。いい物が見つかるといいな」

「……そう、ですね」

そしてまたご飯を食べ進めていく。

わかっていた、大和さんは嫉妬なんてしないと。相手はきちんと友達として紹介した佐介だし、ヤキモチを焼く理由もない。

だけどなぜだろう。寂しい気持ちになるのは。

下を向いたら泣いてしまいそうだ。顔を上げて笑顔を取り繕った。

「今度の休み、佐介と出掛けてきます。……あ、もちろん夕食までには帰りますので」

「わかったよ、ゆっくりしておいで」

どこまでも優しくて、余裕のある大和さん。

提案してくれた蘭には申し訳ないけど、なんの効果も出ないようだ。
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