夢原夫婦のヒミツ
「わかった、すぐに行く」

電話を終えた大和さんは私を見た。

だけど彼がなにを言うのか、聞かなくてもわかる。

「気をつけて行ってきてください」

一言伝えると彼は「ありがとう」と言いながら小さく頭を下げ、急いで着替えを済ませていく。

新婚旅行前にも同じようなことがあった。でも今回は私が経験した土砂崩れが発生したんだよね? しかも時刻も同じ夜。

大丈夫だよね? 安全には充分配慮して活動に当たるとわかっていても、不安になる。大和さんも巻き込まれたりしないよね?

素早く身支度を整えた彼は玄関先で見送る私に「いってくる」と一言残し、家を出ていった。

きっと厳しい現場が待っているはず。私はただ、無事に帰ってきてくれることを祈るしかできないのがもどかしい。

リビングに戻り、点けっぱなしのテレビでは緊急特番が始まっていた。

土砂崩れだけではなく、大雨により河川の氾濫なども多くの場所で発生しているようだ。

だけどまだ情報が錯そうしていて、映像も届いていない。それがますます私を不安にさせる。

被害が大きくありませんように。私の家族のような被害者が出ませんように。
そして大和さんたちが無事に戻ってきますように願うしかない。

この日はなかなか眠ることができず、遅くまでテレビ中継を見ていた。
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