麻布十番の妖遊戯
 あの男に、「ここに来た女がいただろう。お前を助けるために鍵を取りに行った女だ。お前のせいだぞ。あの女が死んだのは」と言われて、私は身体中を針で刺されたような感覚に陥りました。

 私があの女性を殺してしまったんだ。そう思えば思うほど、悔しくて悲しくてどうにかなりそうで、泣き続けました。後悔が募るばかりでした。助けてなんて言ったせいだ。申し訳ないことをした。
 そして、これで終わりだと直感しました。だって、もうどこにも助かる見込みがなかったんです。

 男は鼻歌を歌いながら私の襟首を掴んで引きずり、私を助けようとしてくれた女性が埋まっているという畑に連れて行きました。

 歩けない私は小屋から畑までずっと引きずられていました。
 不思議と痛みはありませんでした。
 久しぶりの外の空気も灰のにおいしかしなかった。両腕はまったく力が入りませんでした。

 両腕は地面に擦れて、壊れた人形を引きずるように土と小石の上を跳ねていました。
 私が落とした物干し竿がまだ転がっていて、無性に悔しくなりました。それよりも、自分の足がないのを見るのはとてつもなく惨めでした。

 あの男は土を掘り返し、あの女性の頭を私に見せつけました。恐ろしかった。自分もこれからこうなると思うと体が震えました。涙もよだれも垂れ流し状態で泣き叫びました。

 でも、少し違和感があったんです。私が見た頭は半分骨が見えていたんです。
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