失翼の天使―wing lost the angel―
「それだけすれ違い生活なのに、夫婦仲が良いって凄いですよね」



「優里にしか興味がないからね。すれ違い生活だけど、離すつもりがないからこうした生活も可能なんだよ。それに俺は個人院だろ?わりと顔は合わせてるんだよ」



午前は9時から12時。

午後は16時から19時半。

木曜日と日曜日は休み。

土曜日の午前は予約のみで。

完全なすれ違いではないんだよね。



「合わせる度にいちゃいちゃして、俺からすりゃあウゼぇけどな!」



「親が仲良い事に感謝しろ!」



「感謝?えっ、感謝!?」



「そうだとも。こんなすれ違いの結婚生活を上手く送れてるのは、うち位のもんだ。だから感謝しろ!」



「ウゼぇー!益々ウゼぇー!;;」



「だからウザくない!そのお陰で誰が産まれて来たかわかってるか?何不自由なく育てたのは、お祖父ちゃんとお祖母ちゃん。優太と優海ちゃん。そして、誰のお陰だ?」



「恩着せがましー;;とんでもない親だな!」



「ご馳走様でしたー!さ、帰りましょうっ!」



「おぉ……!;;」



ヒートアップする親子喧嘩に、面倒くさくなり2人分の食器を流しの水の張られたボウルへと入れ、そそくさと退散。

殴り合いや物に当たるとか、激しい喧嘩にはならない事はないとわかってるけど、これから寝る間を惜しんでの長い話し合いが行われるんだろう。
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