失翼の天使―wing lost the angel―
「ボツリヌス菌で間違いないとの事です!仙田さん、あるだけボツリヌストキシンを用意して、足りないようなら薬剤部に連絡して用意して貰って。」



「はい!」



「念の為、ドクターが投与。ナンバーをカルテに入力し忘れないように伝えて」



「了解しました」



「師長は投与が済んだ患者さんを外科・内科・消化器科・小児科に振り分けて運んで貰って下さい。足りないようなら、どこか空きがある科に依頼して、外科の患者さんとして入れて貰って下さい」



「了解」



「松枝君!自力で帰れそうな人に処方箋出して」



「わかりました!」



混乱して居た場も、治療法が決まり落ち着きを取り戻した。

ナースステーションの脇で、私もボツリヌストキシンを皮下注。

ハンディスキャナーで薬瓶のバーコードを読み取らせながらの作業だけど、ドクターの数からして1時間程度で終われるだろう。



「K駅前のスーパーで、缶詰めが1袋300円で詰め放題のセールがあったらしく、周辺の救急病院にも患者さんが溢れてたそうです」



「なるほどね」



最後の患者さんを運んで来た救急隊員に声を掛けると、感染の元となった理由が発覚。

まだどの缶詰めかとはわかってないようだけど、もしかしたら期限間近の商品があったのかも知れない。
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