失翼の天使―wing lost the angel―
「何かあったの?」



「んーとね……クビになったぁ……」



「何で!」



「沢村君が来たの……。で、芹那の口添えで、私はお払い箱ぉ!」



「は?」


…何それ。



「とりあえず、こっちで寝よう!」



「うーん」



限界に近い明日菜を支え、初療室横の観察ベッドへと明日菜を運ぶ。

鷺沼先生に許可を貰い、最悪一晩はここだ。

それにしても、あのお嬢様は何してるのか。

小林芹那-コバヤシセリナ-は、私から彼氏を奪った大学病院の院長の娘。

そして、沢村朝陽-サワムラアサヒ-は芹那の元彼。

今でも付き合いがあると噂で、同期たちは2人を避けてる。

人の男を略奪しながら、今では不倫。

私が誰かに話すまでもなく、堂々とした動きをしたらしい。



「……もしもし、今って大丈夫?」



『珍しいな。どうした?』



私は明日菜に布団を掛け、ピッチから父親へと電話。



「明日菜の引き取り先を探して欲しいのと、沢村と芹那をどうにかして。ちょっと度が過ぎてると思わない?」



『……そうだな。明日菜ちゃんも可哀想だ』



「お願いします」



『わかった。私に任せなさい』



持つべきものは、親だ。
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