再殺動
「有ちゃん、これから飯行かない?」
「健司(けんじ)君」

あー、どうしよう。今日これから彼氏と会う約束してるんだよね。でも、健司君といた方が絶対得だよね。いっか。彼氏には適当になんか理由言っとこ。

「うん。行く行く」
「渋谷にいい店あるんだ。そこでもいいかな」
「もちろん。てか、そこ行ってみたいし! 楽しみ」
「よかった」
「ちょっと彼氏に連絡したいから、待ってね」
「いいよ。俺も瑠璃に連絡しとくから」

有は彼氏の近藤トム(こんどうとむ)に『モデル仲間と仕事の打ち合わせ入っちゃったから今日の予定、ごめん』と連絡を入れた。トムからの返信を待つことなく、ミラー片手にリップを塗りなおした。

健司もまた、彼女の竹田瑠璃(たけだるり)に適当な理由をメールし、かばんの中にスマホを投げ込んだ。

二人には彼氏彼女がいるけれど、お互いそれを分かった上での付き合いをしていた。

スタジオを出ると二人は程よい距離を保ちながら歩く。
長身、スレンダー、モデルオーラをまき散らしている二人が周りに気付かれるのは時間の問題だった。

二人を写真に撮り、SNSにアップする。たちまち着ている服、持っているバッグ、履いている靴がどんどん売れていく。そうすると彼ら二人にもマージンが入る。
もちろん、そこを計算しての行動だ。

ファンサービスにおいて神対応の二人は、好感度もよく、ネットでは付き合っているんじゃないかという噂が流れていた。

仲の良い二人の行動や態度は憧れの的。
二人の真似するように付き合う人たちもいるくらいだった。
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