お見合い相手はエリート同期

 人がいないところまで歩いていくと腕を引かれ空いている会議室へと連れ込まれた。

「昨日、無理させたかと思って。」

 意地悪く言われ、それだけでも全てが蘇る。
 熱くて濃厚で甘い眩暈のしそうな夜のことを。

 何も言わない私へ澤口はため息を吐いた。

「こうでもしないと話せないだろ。
 電話もメールも無視。
 どうして帰ったりしたんだよ。」

 見えてしまったメール。
 たったそれだけで逃げるようにホテルを飛び出した。

 それから今まで。
 携帯の電源は切ってしまって入れていない。

「澤口こそどうして……抱いたりしたの?」

「遅かれ早かれそうなるだろ。俺達。」

 そうかもしれない。
 そうかもしれないけど。

 思わせぶりな態度を取っておいて。
 澤口こそ私への気持ちがあるかどうかなんて分からない。

 どうにでも女と遊べるくせに。
 女に困ってないくせに。

 仲良さそうに歩く2人が何度も再生されて心を蝕んでいく。

「どうして?どうして優しくしたの?
 酷くしてくれれば良かったのに………。」

 好きだって自覚させられて、あんな、、あんな抱かれ方されたら。

 扉の前に立っていた澤口は後ろ手で鍵を閉めた。

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