お見合い相手はエリート同期

 結婚式を終えて帰り道を澤口と歩く。
 そこで澤口が感心しているような声を上げた。

「スゲーな。人の結婚式で泣ける奴って心が清いって思ってたけど。」

「何?清くなくても泣けるんだなって発見でもしたって言い方。」

 結婚式って母への手紙とか、新郎から新婦へのサプライズがあったりして、泣き所満載じゃない。
 泣けない澤口がよっぽど心が荒んでるのよ。

「いや。俺、冷めた性格だから朱音が羨ましい。」

「褒めてませんよね?」

「褒めてるって。」

「馬鹿にしてる。」

「いや。可愛いなぁって惚れ直した。」

「………ッ。思ってないくせに。」

「いい加減。
 素直に受け取ってもらえない?」

 呆れた声で言われてもそっぽを向く。

 甘い雰囲気になれないのは、どちらかといえば私の方が原因で。
 だってやっぱり澤口と甘い雰囲気って、違和感を感じて……。

「俺ん家、行くだろ?」

 あの同期会の後、小倉くんの別荘へ連れて行ってもらってから澤口と2人でゆっくり会えるのは久しぶりだった。

 だから結局まだ澤口の家へも行けていなかった。

 年末に向けて仕事が忙しいのはいつものことで、クリスマスにいい思い出がないのも仕事のせいなのも多分にあって。

< 164 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop