パクチーの王様
今日もよく働きましたっ。
及第点かどうかは知りませんが、と思いながら、芽以は、チラと厨房で片付けをしている逸人を見た。
ボールを棚に置きながら、
「芽以」
と逸人が呼びかけてくる。
はいっ、と畏まり、芽以はホールからダッシュする。
「速いな、犬か」
と手を止め、逸人はこちらを見た。
……嫁を例えるのに、もっと良い言葉はないのですか、と思いながらも、芽以は忠実な飼い犬のように、逸人の次の言葉を待っていた。
「今日は早めに上がったし。
正月でも開いてる店があるから、行ってみるか」
いきなりそう言われ、芽以は、言葉の意味がつかめずに、はい? と逸人を見返す。
「年末年始、働き詰めだから、何処かへ呑みにでも行くか? と訊いてるんだ。
それとも、家でゆっくりしたいか?」
と逸人は言ってきた。
「いっ、行きたいですっ」
多少は正月らしい華やぎも欲しいと思っていたので、芽以は勢い込んでそう言った。