パクチーの王様


 
 さすがだ。
 近所に適当に開いてる店があるからといって、これか、と思う。

 芽以たちは、店から歩いていける場所にあるホテルの最上階のダイニングバーに居た。

 ま、お正月でも開いてるよねー、ホテルだから。

 こういうところは、旅行に行ったときくらいしか行かないんだが、と思いながら、少々緊張しつつ、メニューを見る。

 薄暗い店内でなにを頼もうか迷っていると、逸人が適当に頼んでくれた。

 酒もいつも同じものを頼みがちなので、たまには人に頼んでもらうのもいい。

 新しい発見もあるし。

 ……新しいハズレも味わうし。

 二杯目のカクテルが香りが強すぎて、いまいち口に合わなかったので、進まなかったのだが、逸人が、

「なんだ。
 呑まないのなら、貸せ」
と言って、芽以のカクテルを取ると、呑んでくれた。

 うひゃーっ。
 申し訳ございませんーっ。

 せっかく選んでいただいたのにーっ。
< 198 / 555 >

この作品をシェア

pagetop