パクチーの王様

 ……いやいやいや。

 ……いやいやいやいやいや。

 いやいやいやいやいやっ!

 今っ。

 今つ、私の身に、一体、なにが……っ!?

 もしや、あれがキスとかいうものなのですか。

 誰とも一度も、したことがなかったので、わからないっ。

 いや、赤ちゃんのときに、両親や聖にされているのかもしれないがっ。

 少なくとも自分の記憶の中にはない体験なので、なんだか訳がわからないまま、ぼんやりしていた。

 芽以の実家に行ったときも、逸人の唇が頬に触れてきたことはあったが。

 あんな風に唇に触れてこられると……、また、全然違う感じがするな、と思いながら、芽以は、ひとり、逸人の消えた扉を見つめていた。





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