パクチーの王様





 夜、二階の廊下を歩きながら、芽以は思い出していた。

 自分を見つめ、
「好きだ、芽以。
 ずっとお前のことが好きだった」
と言った圭太のことを。

 だが、芽以の心に引っかかっていたのは、告白してきたときの顔よりも、
「……なんだ、言えたな。
 今、言えなくてもいいのに。

 今、言っても、どうにもならないのにな」
と呟き、寂しそうに笑った顔だった。

 芽以は無言で廊下を歩き、無意識のうちに、逸人の部屋の戸をノックしていた。

「はい」
と返事があった瞬間に開け、部屋に入ると、なにも考えずに、スポッと寝ている逸人の腕の中に収まった。

 うわっ、と逸人が声を上げる。
< 282 / 555 >

この作品をシェア

pagetop