パクチーの王様



 な、なんということをしてしまったんだ……。

 芽以はモップを手にしたまま、ホールで固まっていた。

 今朝、目を覚ますと、逸人が髪を撫でてくれていて、
「おはよう」
と微笑みかけてくれた。

 ええええええーっ。

 そ、そういえば、昨夜、逸人さんに泣きついたまま寝たようなっ、と固まり。

 固まったまま、ぺこりと頭を下げ、温かい逸人のベッドを出て、自分への戒めのために、エアコンもつけずに寒いまま、部屋で着替え、朝食の支度をして、食べ、また着替えて、今、ホールでモップがけをしているわけなのだが――。

 いや、もう信じられない~っ、と昨夜の自分に対して思っていると、逸人が厨房に下りてきた。

 ひいいいいいっ、と芽以はモップの柄を握りしめる。

 恥ずかしさと申し訳なさで、逸人を撲殺してしまいそうだった。
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