パクチーの王様
「待て」
と逸人が止めた。

「他所を探せ」

「店長っ。
 今、なにか目標を打ち立てて頑張れって言ってくれたじゃないですかっ」

「此処以外でだ」

「お願いしますっ。
 雇ってくださいっ」

「待て。
 お前、パクチー嫌いなんだろうが。
 パクチーが食べられるようになってから来い」

 ……いや、お前が言うな、と思いながら、芽以は逸人を見上げた。

 だがもう、この段階で、雇うことになるんじゃないかなーとは思っていた。

 芽以が会社に行っている間にホールをやってくれる人間が必要だし。

 第一、と芽以は、

「雇ってくださいーっ」
「知らんっ」
とまだ揉めている二人を見た。

 なんだかんだで、逸人さん、人がいいからなー。

 ユニフォームの手配しなくちゃな、と思いながら、芽以は二人を置いて、厨房へと戻っていった。






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