パクチーの王様




 二階の自分の部屋に飛び込んだ芽以は布団を被る。

 ど、どうしよう。

 手をつかまれただけで、激しく動揺してしまった。

 今までも緊張してはいたけど、なんとか、こらえられていたのにっ。

 どうしてしまったんだろうな、私は、と思ったそのとき、とんとん、と階段を上がってくる音がした。

「芽以」

 はは、逸人さんだっ。

 呼びかけるその声はまだ少し遠い。

 芽以は慌てて、ドアに駆け寄り、逸人がつけてくれた南京錠をかけた。

「芽以」
と名を呼びながら、逸人がノックしてくる。

 ひーっ、と思いながら、ドアの前で芽以は固まっていた。





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