mirage of story
〜1〜







"竜達によって世界が支配されし古の時代。
我々、人というものは実に愚かな生き物であった。



遥か世界の始まりから存在する雄大な自然――――大地、水、風。その中で竜達の加護を受け存在する人は、ちっぽけであまりに無知だった。



神の気紛れで創造せられし、ただの人形。

我々の存在価値など、無いに等しいものであった"









文字が流れるように、薄汚れ黄ばんだ紙面を這うように浮かび上がる。



紙の淵は欠け、平面を捜すのが難しい。



表面はザラザラし、所々に穴や亀裂が目立つ。

手でそれを撫でれば、細かい埃が削れた紙の粒子と混ざって手につく。
うっすらと皮膚の肌色がくすむ。






人の手により書かれた故に文字の配列は歪み、手垢や手汗でインクで書かれた文字が黒く滲む。

しかもその上、字が小さく癖字であるため、それを解読しようと挑んだ歴史学者達の苦労は計り知れない。



その苦労を想像し、心の中で両手を合わせる。










それにしても、時の流れというのは恐ろしいものである。



今まで"人"が幾千の、いやそれ以上の時をかけて築き上げてきた歴史ですら、この有様のように風化させてしまうのだから。





いつの日かは元々はそんな歴史など、もはや存在しなかったような顔をして、時だけが優雅に時代を過ぎ去っていくのだろう。

そんなことを考えると、何だか悔しさと共に虚しさを覚えた。







 
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