社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
湿気の多い夜の空気を吹き飛ばすように、室内にはエアコンが効いている。にぎわうフロアの一角には各ブランドの主力商品らしき衣類が展示されていて、大勢の人の目を集めていた。
その反対側には、ヘッドフォンをつけた男性がリズムに乗りながら、いろいろなスイッチやつまみがついた機材を操作している。
あれがDJというやつだろうか。
鼓膜を揺らすような音楽とたくさんの服や人に圧倒されながら、社長の後ろをついて回った。各方面に知り合いがいるらしい社長は、会う人会う人と言葉を交わしていく。
業界人ぽい人たちと談笑し、きらびやかな女性たちに絡みつかれる社長を斜め後ろから見つめながら、私は恐ろしく場違いな自分を顧みる。
パーティーと聞いて服装に悩んだ私が選んだのは、よりによってスーツだ。だって会場の雰囲気がわからなかったし、パーティードレスだって持っていないし。スーツならフォーマルな場でもカジュアルな場でも対応できると思ったから。