社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「んぐ、ふへ?」

 ペットボトルを下ろした営業マンの口端から水がこぼれ落ちる。

 社長はティッシュでそれをぬぐってやると、彼のカバンを探して忘れ物がないか確認したり、エチケット袋を用意したり、あれこれ世話を焼き始めた。そうして到着したタクシーに名取さんを押し込む。

「住所はもう伝えてあるから心配するな」

「へ、え、へ?」

 後部座席に不自然な体勢で収まった名取さんがぽかんと口を開けている。私と同様に状況がのみこめていない部下に向かって、社長はにこりと微笑んだ。

「おつかれ。また月曜日な」

 ドアが閉まり、タクシーが通りを走りだす。

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