社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 こういうのって、拒んだら嫌われるのかな? 

 でも、でも。

 いろいろ考えすぎて頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。手まで震えそうになって、自分で自分の手をぎゅっと押さえた。すると、のしかかっていた重みが急に消えた。

「……すまん」

 静かな声に、目を上げる。

 社長は頭をがりがり掻くと、思い出したように私にメガネを戻した。くっきりと線を結んだ視界の中で、端正な顔はどことなく居心地悪そうだ。

「今日は……風呂入って、もう寝ろ」

 そう言って、彼は立ち上がる。耳に入った水でも払うように頭を小さく振って、そのまま玄関に足を向けた。

「え? どこに行くんですか?」

 ふいに糸が切れたような感覚に、焦りが募っていく。ソファから身を乗り出す私を振り返って、社長はどことなく気まずそうな顔を見せ、目を逸らした。

「ちょっと頭冷やしてくる」




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