社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 あくびをしながら起き上がり、しばらくぼうっとあたりを見ていた。

 なんだか変な夢を見たような……。

 目覚めた瞬間から遠ざかっていく映像を思い起こそうとしながら、いつものようにカーテンを開けていると、部屋の外からガタガタと物音が聞こえた。

 メガネを掛け薄手のパーカーを羽織ってドアを開けると、階段を下りようとしていた社長と目が合った。

「あ……悪い。起こしたか」

「おはようございます。ずいぶん早いですね」

「早いっていっても九時だけどな」

「だって、休みの日はいつもお昼まで寝てるじゃないですか」

 そこまで言って、私は社長が抱えているものに気づく。

「ああ、さっきこいつを思い切り手すりにぶつけてな。このメゾネットの不便な点は荷物の上げ下ろしが面倒なことだ」

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