社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 面倒そうに髪をかき上げ、ネクタイを締める姿にくぎ付けになる。そのままスーツブランドの広告に登場してもおかしくないくらい似合っていて、目眩がしそうだった。

「あ、優志くん。準備できた?」

 洗面所から出てきた新庄さんが、すかさず彼の腕を取る。

「それじゃあ、行きましょう。みんな、またね。来週もう一度顔を出すわ」

 そう言って、新庄さんは社長を強引に引っ張りながら玄関を出ていった。ふたり並んだ後ろ姿が、やけに目に焼き付く。

「うっわ、めちゃくちゃお似合い……思わず見惚れちゃった」

 板倉さんの明るい声に我に返る。私は自分の指が震えていることに気づいて、慌てて反対の手で隠した。

 各々席に戻っていく社員たちの声が耳に張り付く。 

「やっぱり素敵だわ、あのふたり」

「本当にね」

< 329 / 383 >

この作品をシェア

pagetop