社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
作業や帰り支度を再開する彼らの脇をすり抜けて、板倉さんが駆け寄ってきた。周囲をきょろきょろ見回すそぶりをしてから私に目を戻し、口に右手を当ててにやりと笑う。
「ふふー、私聞いちゃった」
ちょいちょいと指を動かし私に屈むように促すと、彼女は私の耳に口を寄せた。
「あのふたり、これから新庄さんの両親に挨拶に行くみたいだよ」
「え……?」
「夕方、ふたりが裏で話してたの。新庄さんが社長に『いい加減に両親に会って』て言ってた」
どくりと心臓がひときわ大きな音を立てた。
「両親に、挨拶……?」
どくどくと胸の奥で鼓動がする。心臓の収縮に合わせて毒入りの血が全身を回るみたいに、手足がしびれていく。
「あのふたり、別れるどころか結婚秒読みかも」