社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 ここからだと、月すら見えない。

「二次会行く人、社長がおごってくれるってよー!」

 営業マンの名取さんが赤い顔ではしゃいだように叫ぶと、あちこちから「行きます!」と声が上がった。

 赤い顔を陽気に緩ませた同僚たちは、一人ひとりがファッションスナップのモデルになれるくらい洗練された格好をしている。そのなかでも一際存在感のある彼を、私はすぐに見つけられた。

 新井優志。

 社長は面倒な顔をしながら、そう年齢の変わらない社員たちを見てため息をついている。

 ふと目が合って、どきりとした。社長は私の正面にやってくると、周囲を見回してから気遣うように口を開く。

「大丈夫か?」

「え?」

「あれから、絡まれたり、飲まされたりしなかったか?」

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