君が夢から覚めるまで
学園祭当日、怜の休憩時間に合わせて高校まで行く。
全然知らない学校なのに、なんだか懐かしく思えた。
制服を着た生徒たちを見ると、キラキラしてるように見えて、あの頃の自分と重ねる。
高校生活が楽しかったのは2年生まで。
3年生の一年間は地獄のようだった。
彼にサヨナラを言われ、彼のいない毎日。
友達はいたが、無くなったモノを埋めることは出来なかった。
あの街は思い出が多すぎる…だから、大学は地元から離れた。
彼との思い出の影を見ないフリをしながら毎日を過ごすのは限界だった。
「香帆ちゃ〜ん」
校門で待ってると、怜が手を振りながら駆け寄って来た。
「迷わず来れた?」
「うん、怜君が分かりやすく教えてくれたから」
ニッコリ笑うと怜の顔がパアッと明るくなった。
「いっつも教えてもらうばっかりの俺が初めて香帆ちゃんに教えた事だね!」
「初めてじゃないでしょ」
「え?他になんかあったっけ?」
「う〜ん、ここじゃ言えない」
「なんだよ〜結局無いって事だろ〜」
がっかりそうに言うが、顔は笑っていた。
「怜!さっき桃華(ももか)がお前の事…って、誰?」
ジャージを着た男子高生が怜に話し掛け、香帆に気付き目が合う。
香帆は軽く会釈した。
「彼女」
「え⁉︎」
思わず香帆は声をあげてしまった。
「あはは〜嘘。カテキョの先生」
「あ〜あの噂の。へぇ〜こんな可愛い先生いるんだ〜」
男子高生は遠慮なく香帆を見た。
「よ、吉井です。怜君の家庭教師のバイトしてます」
「俺もカテキョ付けてもらおっかな〜」
「おいっ!香帆ちゃんはダメだからなっ‼︎」
怜が香帆の肩を自分の方へ抱き寄せた。
一瞬、ドキッとする。
「はいはい、取らねぇよ。センセ、こいつ馬鹿だからちゃんと見てやってよ」
「馬鹿とは何だよ!」
二人のやり取りを香帆は微笑ましく思った。
その後、喫茶店やライブを観たりして、デートしてるような気分だった。
最初、来ることにかなり躊躇したが、怜の楽しそうな顔を見て来て良かったと思った。
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