君が夢から覚めるまで
怜は友人の類(るい)の買い物に付き合って、学校帰り街をブラブラしていた。
「あれ?あれって、怜のカテキョ先生じゃない?」
類の指差す方を見ると…通りの向こうを男と並んで歩く香帆がいた。
楽しそうに会話している姿を見て、胸がズキンと酷く痛む。
「彼氏いんじゃん。ま、クリスマス前だもんな。…怜?」
怜は言葉を失い、動けずにいた。
「大学生にとって、高校生は所詮子供だよ。早いとこ諦めなよ、な」
「クリスマス…俺と会う約束したのに…」
「お詫びしろって無理やり取り付けたんだろ?お前と会った後で彼氏ん家泊まりに行くぐらいは出来るだろ。やっぱ朝まで…」
「やめろっ‼︎」
思わず大声を出してしまった。
たとえ、さっきの男が彼氏だとしても、香帆のそんな姿は想像したくない。
「…違う…あれは香帆ちゃんじゃない…」
そう自分に言い聞かせた。
そう思い込もうとした。
なのに、なぜ聞いてしまったのだろう…。
次の家庭教師の帰り、先日男と歩いてる所を見たと言ったら、香帆はひどく動揺した。
「誰?」
「…翔也さんって言って、カフェの店長…」
「付き合ってんの?」
「そんなんじゃないけど…」
「じゃ何してたの?」
「それは…」
香帆は言葉を濁し、結局このモヤモヤは晴れないままクリスマス当日を迎える事になった。
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