君が夢から覚めるまで
自分の決心の弱さを憎みたくなる…。
結局、今日のデートも実行出来ずにいた。
ーーー俺ってこんなにヘタレだったっけ…。
ガックリと項垂れながら、駅のホームに立つ。
ここからは香帆とは別々の電車になる。
ここでお別れだ。
「怜君?どうしたの?」
香帆が心配そうに怜の顔を覗き込む。
終電近くになり、ホームにいる人はまばらだ。
向かいのホームの特急がけたたましく音を立てながら通り過ぎてゆく。
風に煽られて香帆の髪が揺れ、フワッと甘い香りがする。
「香帆ちゃん…」
腰を引き寄せ、頬に手を添え…唇を重ねた…。
香帆は驚いてビクッとしたが、抵抗はしなかった。
触れるだけのキス…。
唇から香帆の温もりと柔らかさが伝わってくる…。
漸く唇を離すと、香帆は真っ赤な顔をしていた。
つられて自分も赤くなる。
「ごめん…イヤだった?…」
「ううん…突然でちょっと驚いただけ…」
怜を見上げてフフッと笑った。
その顔に安堵を覚える。
「もっかいしていい?」
「え、ええっ⁉︎」
「電車来るまで…」
それから何度も啄ばむようなキスをした。
もう止まらなかった…。
キヨスクの影に隠れて…それはいけない事をコッソリするような…どこか罪悪感にも似たそんなキスに、香帆の唇に夢中になった。
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