君が夢から覚めるまで
14.嘘
亮が『またね』と言った理由はわりとすぐ分かった。
バイト先の店長、翔也の結婚が決まった。
カフェのスタッフ全員で前祝いをやる事になった。
そこに、元スタッフという事で亮が来てたのだ。
香帆と亮が以前付き合ってた事を知ってるのは、このメンバーの中では翔也だけだった。
スタッフは亮と久々の再会で盛り上がっていた。
香帆はそれを少し離れたとこから見ていた。
「おいおい、今日は俺のお祝いだろ?なんでみんな亮ばっかなんだよ」
翔也は文句言いながらも嬉しそうに笑っていた。
「翔也さん、乾杯しましょ」
香帆はグラスを持って翔也の横に座った。
「香帆ちゃん、悪かったな、亮の事…俺もまさか来てるとは思わなくてさ。相模さんが声掛けたらしいけど」
翔也は申し訳なさそうに言った。
「気にしないで下さい。実は、この間会ったばっかりなんですよ」
「え?まだ繋がってんの?」
「繋がってると言うか、繋がっちゃったんです…」
「どうゆうこと?」
訳がわからないという感じで香帆を見てくる。
「亮君…私の彼のお兄さんだったんです」
「え、ええっ⁉︎」
ま、当然の反応だった。
「彼の合格祝いに呼ばれて行ったら亮君がいて。勿論知らなかったですよ。お互い兄弟がいるなんて聞いた事なかったし…ただ、このまま彼に黙っておくべきか…」
「そうだよな…兄ちゃんが元カレって知ったらそれはそれでショックだよな…」
「ですよね…だから言えなくて…」
おめでたい席なのに、ちょっと空気が重くなる。
「あ〜‼︎翔也さん、香帆ちゃん独り占めはいけませんよ〜なに二人で話してんですか〜?」
珍しく酔いが回ってるのか、亮が絡んで来た。
「内緒だよ」
「え〜怪しい〜俺も混ぜてよ」
香帆は愛想笑いを浮かべてそっと席を離れた。
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