君が夢から覚めるまで
怜との待ち合わせ場所に時間ギリギリで駆け付けると、怜はもう既に来ていた。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「ううん、まだ時間前だよ。ひょっとしたら来ないんじゃないかってドキドキしちゃったよ」
「ごめんね…」
「行こ!」
怜はニッコリ笑い、並んで歩き出した。
「今日…浴衣、着て来てくれたら嬉しいな〜なんて思ってた」
「ごめん…バイトがギリギリになっちゃって、家に帰ってる時間がなかったの」
本当は、高校生相手に浴衣なんか着て張り切っちゃってると思われるのが恥ずかしかった。
だから、わざとバイトをギリギリの時間まで入れたのだ。
「カテキョ?」
「ううん。大学の近くのカフェ」
「そうなんだ…カテキョ以外にもやってたんだ」
「カテキョは時間が限られちゃうからね」
そうなんだ…と小さく呟き、怜は何かを目で追う。
その視線の先は浴衣を着た女性だった。
「あ…浴衣…ごめんね」
「ううん。でも、ちょっとだけ期待してた」
「ごめん…」
「そんなに謝んないでよ。今日謝ってばっかじゃん」
「ごめん…あっ!」
はははっと楽しそうに怜は笑った。
「良いよ、良いよ。じゃあ来年は着て来てよ、ねっ‼︎」
ーーー来年…?
そう言うと怜は香帆の手を取って足早に歩き出した。
「怜、君?」
香帆からは怜の後ろ姿しか見えない。
彼の耳が赤くなってるようにも見えたが、辺りは暗くなり始めてて、ハッキリとそれは分からなかった。
今日の怜はなんかいつもと違う気がした。
いつもと違う場所だからだろうか…?


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