いちごキャンディ×ブラックチョコレート
胸が締め付けられた。

時が止まったかのように息をすることを忘れた。

でも彼のその真剣な表情からは目が離せなかった。

返事、するべきだよね?

なんて答える?

なんて答えたい?

私は今何を思っている?


「でも返事はいらない」


だけど、汐理さんはそう答えた。


「どうして、ですか」

「俺は依知子の心も欲しいんだ。俺を好きになって欲しい」


いつだったか。

汐理さんの好きな人を聞いた時、彼は私にこう言った。

俺の事好きになればいいのにって思うと。

あの時は自分に言われているような錯覚を覚えたが紛れもなく私に言っていたというわけで。


「今はまだ進藤先輩のことがあると思う。そんな簡単に人の心を動かせるとは思ってない。だけど」


彼の続く言葉を待った。


「もうあんなに泣かなくてもいいように、俺が支えてあげたい」


恥ずかしそうだが、真剣にそう言った彼を直視することが出来なかった。
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